🏄 1. はじめに:高得点のカギは「垂直」と「多様性」
ショートボード競技の採点は、「急進性(ラディカルさ)」「多様性」「難易度」の3要素が核となります。単に波に乗るだけでなく、波の最もパワーのあるセクションで、ボードをいかに垂直に上げるか、そしてそれを複数のマニューバーで繋げられるかが勝負の分かれ目です。
このページでは、プロの大会で高得点につながる主要なテクニックを解説します。
💡 観戦のポイント: 選手が波のどの位置で技を仕掛けているか、ボードがどれだけ垂直に上がっているか、そして複数の技がスムーズに繋がっているかに注目すると、ジャッジの採点理由が理解できます。
🔄 2. 高得点の柱:主要なターン系マニューバー
これらの技は、波のパワーを最大限に利用し、採点のベースとなるフロー(流れ)を作るために必須です。
💥 2-1. オフ・ザ・リップ (Off The Lip)
どんな技?
波の崩れる最も高い位置(リップ)にボードを当て、一気に方向転換する技。
高得点ポイント:
ボードをどれだけ垂直に上げられたか、そしてボードを返す際にどれだけ大きなスプレー(水しぶき)を上げられたか。波のポケット(崩れる直前の最もパワーのある部分)で仕掛けるほど高評価。
「オフザリップ」出典/YOKOHAMA INSIST SURF
💬 中級者の声: 「リップに当てるタイミングが難しい。ボードの反応が良くないと、垂直まで上げられずに失速してしまう」
千葉在住・30代男性・サーフィン歴4年
🔃 2-2. カットバック (Cutback)
どんな技?
波から遠ざかってスピードを失った際や、次のセクションに進むために、波のフェイス(斜面)を大きく使い、180度旋回して波のパワーゾーンに戻るための技。
高得点ポイント:
ボードのレールを深く使い、勢いを失わずに大きな円を描けるか。水しぶきの大きさや、戻る動作のスピード感も重要。
バリエーション:
ラウンドハウス・カットバック(大きな孤を描く)、テールを流す(スプレーを多く出す)など。
「カットバック」出典/YOKOHAMA INSIST SURF
↩️ 2-3. リエントリー (Re-entry)
どんな技?
オフ・ザ・リップと似ているが、リップにボードを当てた後、波の裏側や崩れた白波の中にボードを入れ、再び波のフェイスに戻ってくる技。
高得点ポイント:
白波の奥深くに入り込み、体勢を崩さずに波のフェイスに再突入(Re-entry)できる難易度の高さ。ボードをほとんど垂直に立てる動作が求められます。
「リエントリー」出典/Japanese Life
🌊 2-4. カービングターン (Carving Turn)
どんな技?
スピードに乗った状態で、ボードのレール(ふち)を深く入れ、波の斜面で大きな孤を描くようにターンする技。
高得点ポイント:
スピードとパワーを維持したまま、レールをどれだけ長く波に食い込ませ、伸びのあるターンができるか。フロー(流れ)とパワーの評価を高めます。
「カービングターン」出典/YOKOHAMA INSIST SURF
💬 上級者の声: 「深いカービングはボードの性能とフィンのホールド力が重要。レールが入った瞬間の安定感が全然違う」
湘南在住・40代男性・サーフィン歴15年
🚀 3. 難易度と革新性:空中技(エリアル)とスライド技
これらの技は、成功すれば一気にビッグスコアにつながる、リスクの高いマニューバーです。
✈️ 3-1. エアー(Air / Aerial)
どんな技?
波のリップやセクションの形を利用して、ボードごと空中に飛び出す技。
高得点ポイント:
高さと飛距離。空中でボードを掴む(グラブ)動作や、回転(スピン)を加えるほど難易度が上がり、着地を成功させることが絶対条件。
バリエーション:
- ストレートエアー: 飛び上がってそのまま着地する最も基本的な形。
- エアーリバース: 空中で180度以上回転し、着地する技。難易度が非常に高い。
ジョンジョン・フローレンス 出典/THE SURF NEWS
「エアーリバース」ジャック・フリーストーン 出典/2019 World Surf League
💬 上級者の声: 「エアーは波のタイミングとボードの軽さが全て。空中での体勢維持と着地の瞬間、ボードの反応が遅いと一瞬で失敗する」
茨城在住・30代男性・サーフィン歴10年
⚡ 3-2. スナップ (Snap)
どんな技?
波のトップやセクションで、テール(ボードの後ろ)を軸にボードを急激に振り抜き、瞬時に方向転換する技。オフ・ザ・リップよりも動作が小さく、瞬発力が求められる。
高得点ポイント:
動作の速さと鋭さ、そしてテールが流れる瞬間に上がるスプレーの大きさ。波の力の弱いセクションでも意図的にスピードを調整する技術力が評価されます。
「スナップ」コロへ・アンディーノ 出典/world-surf-movies
🌀 3-3. チューブライディング (Tube Riding)
どんな技?
巻き上がってできる波の洞窟(チューブ)の中を滑り抜ける技。
高得点ポイント:
チューブの中にいる滞空時間。危険な状況下で、いかに深く、長く、ボードをコントロールできるかが評価されます。チューブメイク(抜け出すこと)ができれば、それだけで非常に高い点数が出ます。
「チューブライディング」出典/THE SURF NEWS
💬 プロの声: 「チューブは波との対話。一瞬の判断ミスで巻かれる。ボードのレールコントロールと冷静さが命」
プロサーファー・40代男性
🔗 4. 勝利への鍵:コンビネーションとフロー
個々の技の難易度だけでなく、それらを「繋げる(コンビネーション)」ことが勝利の鍵です。
ジャッジは、スピード、パワー、フロー(流れ)が途切れることなく、複数の難易度の高い技を連続で成功させているかに注目します。一連の動作の「完成度」こそが、ビッグスコアの最大の秘密です。
💡 高得点を出すコンビネーション例:
- カットバック → パワーゾーンに戻る
- オフ・ザ・リップ → 垂直に上げてスプレー
- スナップ → 素早い方向転換
- エアー → フィニッシュで大技
この4つの技を一本の波で途切れることなく繋げられれば、9点台のビッグスコアも狙えます。
出典/WAVAL
🎯 観戦のポイント:
選手が一本の波で何個の技を成功させたか、そしてその間に減速やミスがなかったかに注目すると、なぜその波が高得点だったのかが理解できます。