【フィン選びの教科書/ショートボード編】初心者から上級者まで、乗り味を変えるフィンの選び方

【注意】 本記事で解説するトライフィン、クワッドフィン、FCS II / Futures.といったセッティングやシステムの多くは、ショートボード(パフォーマンスボード)のフィン選びを前提としています。
ミッドレングスやロングボードのフィン選びについては、選択基準が大きく異なるため、別記事にて詳しく解説しています。そちらをご参照ください。

  1. 【初級編/ショートボード】
    1. フィン選び その1:【規格問題】あなたのボードはどっち?『FCS II』or『Futures.』
    2. フィン選び その2:【セッティング】初心者は迷わず「トライフィン(スラスター)」一択!
      1. なぜ初心者にトライフィンが最適なのか
    3. フィン選び その3:【サイズ】自分の体重に合ったフィンを選ぶ
      1. 体重別フィンのサイズ目安
      2. サイズ選びのポイント
    4. フィン選び その4:【素材】最初は「ネオグラス/樹脂系」の柔らかいフィンが最適
      1. 硬いフィン(パフォーマンスグラスなど)はまだ早い?
  2. 【応用編/ショートボード】乗り味を変える!フィンセッティングの特性
    1. セッティング①:ツインフィン(2枚)
      1. 特性とライディングへの影響
    2. セッティング②:クワッドフィン(4枚)
      1. 特性とライディングへの影響
    3. セッティング③:ファイブフィンシステム(5プラグ)
      1. 特性とライディングへの影響
      2. デメリット
  3. 【上級編/ショートボード】性能を引き出すフィンの科学
    1. 知識①:フィンの各部名称がライディングに与える影響
    2. 知識②:FLEX(しなり)の科学と波への適合
      1. 1. 柔らかいフィン(フレックス性が高い)
      2. 2. 硬いフィン(フレックス性が低い)
  4. 【実践編】よく行く海の「生きた情報」を活用しよう
    1. 【まとめ】フィン選びを確実なものとし、理想のライディングへ
      1. フィン選びの「黄金法則」と次のステップ

【初級編/ショートボード】

フィン選び その1:【規格問題】あなたのボードはどっち?『FCS II』or『Futures.』

どんなに良いフィンを選んでも、ボードの規格に合わなければ装着できません。フィン選びの「初歩の初歩」であり、最も重要なポイントが、ご自身のサーフボードのフィンボックス規格が「FCS II」「Futures.」かを確認することです。
現在、ショートボードの主流なフィンシステムはこの2つの規格に二分されます。

規格見分け方と特徴
FCS II (エフシーエス ツー)フィン根元にツメ(タブ)が2つ。ネジを使わず(または1本)はめ込む、世界的に最も普及しているシステム。
Futures. (フューチャー)フィン根元が1枚のプレート状。ボードの前面からネジ1本で固定する、グラスオンに近いフィーリングが特徴。

まずは、ご自身のボードのフィンボックスがどちらの規格なのかを必ず確認し、対応する規格のフィンを選ぶことから始めましょう。

フィン選び その2:【セッティング】初心者は迷わず「トライフィン(スラスター)」一択!

フィン選びの第一関門である「規格問題」をクリアしたら、次に考えるのは「フィンの枚数(セッティング)」です。
結論から言うと、あなたがサーフィンを始めたばかり、またはこれからライディングの基礎を固めたいのであれば、セッティングはまず「トライフィン(スラスター)」一択で間違いありません。

特徴詳細
枚数3枚(サイドフィン2枚、センターフィン1枚)
推奨理由直進性、回転性、安定性のバランスが最も取れており、どんなコンディションでも安定した操作性を提供します。

なぜ初心者にトライフィンが最適なのか

  • クセがない乗り味: トライフィンは、すべてのフィンセッティングの中で最もニュートラル(中立的)な乗り味を提供します。この安定感が、ボードへの立ち方、体重移動、ターンの基本動作を習得する上で、最高の土台となります。
  • 汎用性の高さ: 小さな波から頭オーバーの大きな波まで、ほとんどのコンディションに対応できる万能性を持っています。フィンセッティングを変えずに、様々な波を経験できるため、集中して練習に取り組めます。
  • 市場の豊富さ: 最もスタンダードなセッティングであるため、市販されているフィンの種類が圧倒的に豊富です。上達に伴って素材や形状を変えたいときも、トライフィンなら選択肢に困ることはありません。

まずはトライフィンで基本的なボードコントロールを身につけ、自分のライディングスタイルが明確になってから、ツインフィンやクワッドフィンといった「個性的な乗り味」に挑戦することをおすすめします。

スラスター

フィン選び その3:【サイズ】自分の体重に合ったフィンを選ぶ

フィンのサイズ(Grom, S, M, Lなど)は、「誰が乗るか」、つまりあなたの体重に合わせて選ぶ必要があります。体重とフィンのサイズが合っていないと、ボードの操作性や安定性が著しく低下してしまいます。

体重別フィンのサイズ目安

※メーカーやモデルによって推奨体重は多少異なりますが、一般的には以下の表を目安にしてください。

サイズ推奨体重の目安サイズが合わない時の影響
Grom (グロム)35 kg 〜 55 kg 程度のジュニア層非常に軽量な方に最適。大人が使うとフィンが小さすぎてホールド感が得られない。
S (Small)55 kg 〜 70 kg 程度の軽量な方体重が重いとフィンが支えきれず、ターン時にテールが抜けやすくなる。
M (Medium)65 kg 〜 80 kg の標準的な方ほとんどの成人男性・女性に適合する、最も汎用性の高いサイズ。
L (Large)75 kg 〜 90 kg の重い方体重が軽いとフィンが強すぎて動かせず、ボードの操作が重く感じる。

サイズ選びのポイント

フィンのサイズが体重に合っていないと、ボードの動きが極端に不安定になるため、自分の体重に合わせたサイズ選びは非常に重要です。

  • 基本はMサイズから: 日本人サーファーの多くはMサイズで問題なく、特に初心者の方は、まずはこの最も汎用性の高いMサイズから試すのが無難です。
  • 重い方は大きめ推奨: 体重が重い方は、推奨体重の上限に近い場合でも、Lサイズを選ぶ方が安定感が増し、ボードのコントロールがしやすくなります

【サイズ間違いの具体的事例】

フィンサイズが体重に合っていないと、ボードの安定性や操作性が損なわれます。

  • フィンが小さすぎる場合(例:80kgの人がSサイズ)は、フィンが波の力を支えきれず、ターン時や強い水圧を受けた際にテールが横滑り(スピンアウト)しやすくなります。特に掘れた波や強い波でのライディングが困難です。
  • フィンが大きすぎる場合(例:50kgの人がLサイズ)は、ボードが重く感じて操作が困難になり、フィンが必要以上の抵抗となるため、ターンが伸びずクイックで機敏な動きができなくなります。

これらの点を踏まえた上で、推奨サイズから外れるフィンをご自身で選ぶことは問題ありません。フィン選びの理論を理解し、自分のスタイルに合わせて選択しましょう。

フィン選び その4:【素材】最初は「ネオグラス/樹脂系」の柔らかいフィンが最適

フィンセッティングをトライフィンに決めたら、次は素材を選びます。フィンの素材は、そのFLEX(しなり)を決定づけ、ボードの加速やターンの感触に大きく影響します。
初心者が最初のフィンセットを選ぶ際には、以下の理由からネオグラス(Neo Glass)やグラスフレックス(Glass Flex)といった「樹脂系の素材」を選ぶことを強くおすすめします。

項目初心者に樹脂系フィンが最適な理由
FLEX(しなり)「柔らかい(フレックス性が高い)」ため、ターン時にフィンがしなり、その反発でボードに加速をつけやすい。脚力に自信がない方でもスピードを生み出す補助となります。
安全性柔軟性が高いため、ボードやフィンに強い衝撃が加わった際、破損しにくく、怪我のリスクも軽減されます。
価格グラスファイバーやカーボンといった高性能素材に比べ、比較的安価に手に入ります。最初のフィンとして試しやすい価格帯です。

硬いフィン(パフォーマンスグラスなど)はまだ早い?

パフォーマンスグラス(PG)やカーボンといった硬い素材のフィンは、水圧に対する反応が鋭敏でクイックなターンを可能にします。しかし、これはボードへの繊細な荷重移動や高い技術が求められるため、最初のセットには向きません。
まずは柔らかい樹脂系のトライフィンでサーフィンに慣れ、ボードを動かす感覚を掴んでから、硬い素材にステップアップすることをおすすめします。

【応用編/ショートボード】乗り味を変える!フィンセッティングの特性

セッティング①:ツインフィン(2枚)

ツインフィンは、センターフィンがなく、左右に大きなフィンが2枚配置されたセッティングです。レトロフィッシュなどに多く採用され、その圧倒的なスピード感が魅力です。

特徴詳細
枚数2枚(大きなサイドフィンのみ)
ライディングルース(緩い)で爆発的な加速力。軽快なスライド感を伴うドライブターン。
主な用途フィッシュボードレトロ系、小波用ボード

特性とライディングへの影響

  • 圧倒的なスピードと加速: センターフィンがないため、水の抵抗が極限まで少なく、トップスピードに乗るのが非常に速いのが特徴です。特にパワーのない小波でも、ボードが生き生きと走ってくれます。
  • ルースな操作感: テールエンドを抑えるフィンが少ないため、ターンはルースで軽快です。意図的にテールを滑らせる**ドリフト(スライド)などの遊び心あるアクションが楽しめます。
  • デメリット: 直進安定性が低く、スピードが出た状態や、波のパワーゾーンで強く踏み込んだ際に、フィンが水から抜けやすく、スピンアウト(横滑り)しやすい傾向があります。そのため、安定性よりもスピードと遊び心を求める中上級者向きです。
ツインフィン

セッティング②:クワッドフィン(4枚)

クワッドフィンは、サイドフィン2枚と、テール付近に配置される小さなリアフィン2枚の合計4枚で構成されるセッティングです。「Quad(4つ)」の名前の通り、水の抵抗を抑えつつ、ドライブ性能を高めた現代的なセッティングです。

特徴詳細
枚数4枚(フロント2枚、リア2枚)
ライディングスピードとドライブ(推進力)を両立。波の力を効率よく捉え、鋭いターンと加速が可能。
主な用途チューブライディング速い波、小波でのスピード確保

特性とライディングへの影響

  • 抜群のスピードとドライブ: センターフィンがないため水の抵抗が少なく、ツインフィンに迫る爆発的なスピードを生みます。さらに、テールエンドのリアフィンが波の力をしっかり捉え、トライフィン以上の強いドライブ(押し出し)を提供します。
  • 高いホールド性能: 4枚のフィンがテールを支えるため、高速時や急激なターン時でもホールド力(波への食いつき)が高く、スピンアウトしにくい安定性があります。
  • デメリット: トライフィンに比べると、テールの踏み込みに対してルース(緩い)に感じることがあります。また、波のトップでの縦への返し(リップアクション)**がトライフィンほどシャープになりにくいという意見もあります。
クアッドフィン

セッティング③:ファイブフィンシステム(5プラグ)

ファイブフィンシステムは、ボードのテール部分に5つのフィンボックス(プラグ)が埋め込まれているボード構造を指します。これは、特定のセッティングではなく、ボードが持つ互換性(ポテンシャル)を示すものです。

特徴詳細
枚数5つのボックス(プラグ)がある
最大の利点トライ、ツイン、クワッドのセッティングを自由自在に変更できること。
用途オールラウンド、ボードの乗り味を頻繁に試したいサーファー

特性とライディングへの影響

  • 圧倒的な汎用性: 5プラグボードは、以下の通り、波のコンディションや気分に合わせて最適なセッティングを瞬時に選べます。
    • トライフィン (3枚): バランス重視の標準セッティング
    • クワッドフィン (4枚): スピードとドライブ重視
    • ツインフィン (2枚): 加速とルース感重視
  • 一つのボードで多様なライディング: 旅先などで「この波にはトライよりもクワッドが良い」と感じた時でも、ボードを替えずに対応できるため、最高のパフォーマンスを引き出しやすくなります

デメリット

  • わずかな重量増: 5つのフィンボックスをボードに埋め込む分、わずかにテール部分の重量が増す傾向があります。この差はごくわずかですが、超軽量化を追求するトップレベルのサーファーには嫌厭けんえんされることもあります。

【上級編/ショートボード】性能を引き出すフィンの科学

フィンの性能は、枚数や配置だけでなく、その形状、しなり、素材といった微細な要素によって大きく左右されます。ここでは、ボードの乗り味を根本から変えるフィンの科学について解説します。

知識①:フィンの各部名称がライディングに与える影響

フィンを選ぶ際、パッケージに記載されている「ベース」「デプス」「スイープ」といった各部名称の数値は、ライディングの特性を理解する上で非常に重要です。

名称解説ライディングへの影響
BASE(ベース)サーフボードに接する、フィンの底辺の横幅幅が広いほど直進安定性が高まり、ドライブ(推進力)を生みます。
DEPTH(デプス)ベースを底辺とした時の、フィンの最も高い位置までの長さ(高さ)深いほどホールド性が増し、ターン時の安定性が高くなります。
SWEEP(スイープ)フィンの輪郭がどれだけ後方へカーブしているかを示す角度。角度が大きい(寝ている)ほどターンが長く、大きくなり、角度が小さい(立っている)ほどクイックで機敏なターンが可能になります。
AREA(エリア)フィン全体の表面積面積が広いほどホールド力と安定性が増し、狭いほどルース(緩い)で軽快な乗り味になります。
補足フィン全体の輪郭をテンプレート/フォルム、先端部分をティップと呼びます。

知識②:FLEX(しなり)の科学と波への適合

フィンのFLEX(フレックス:しなり)は、素材によって決まり、ボードの加速とコントロールに直結します。

1. 柔らかいフィン(フレックス性が高い)

特徴ライディングへの影響適したコンディション
しなりが大きいターン時にしなりを貯めてリリースする(開放する)動きが加わり、ドライブの効いた伸びのあるターンをしやすい。パワーの無い小波や、ゆっくりとしたブレイク。しなりがボードを加速させる補助となります。
デメリットターン時のレスポンスが緩慢になり、クイックなターンはやや難しくなる。

2. 硬いフィン(フレックス性が低い)

特徴ライディングへの影響適したコンディション
しなりが小さい即座に水流を捉え、ホールド力(安定感)や駆動力(推進力)が増す。パワーのある速い波や、掘れた波。硬さが波の強力な水圧に負けず、ボードを安定させます。
デメリットドライブを効かせた伸びのあるターンが難しくなり、ボードの動きがダイレクトに伝わる。

【実践編】よく行く海の「生きた情報」を活用しよう

フィン選びの基本(規格、セッティング、素材)を学んだら、最後に忘れてはならないのが、あなたが頻繁にサーフィンをする場所の「生きた情報」取り入れることです。
フィンは波のコンディションに大きく左右されます。そのため、地域のサーファーやショップから情報を集めることが、最適なフィンに出会うための近道になります。

情報源アドバイスを求める内容活用のメリット
地域のサーフショップ「このエリアで初心者におすすめのトライフィンセット」や「この海岸で一番売れているモデル」地域の波質(パワー、ブレイクの速さ)を考慮した、プロの確実な推奨を得られます。
海岸の先輩サーファー「この波の時、どんなフィンを使っているか?」や「このボードに合うフィンは?」周囲のサーファーの実績に基づいた具体的なアドバイスを得られます。ただし、アドバイスを求める際はマナーを守りましょう。

【まとめ】フィン選びを確実なものとし、理想のライディングへ

この記事を通じてあなたはフィン選びの基本から応用、そして科学的な知識までを習得されました。フィンは、サーフボードの乗り味を根本から変えることができる、最も重要なチューンナップパーツです。

フィン選びの「黄金法則」と次のステップ

あなたが今、「もっと加速したい」「ターンが重い」「テールが滑る」といった悩みを持っているなら、それはボードのせいではなく、フィンを変えることで解決できる可能性が非常に高いです。

初心者のあなたは、まずトライフィン・Mサイズ・ネオグラス(樹脂系)を選ぶという基本ルールをマスターすることで、ボードコントロールの基礎を安定して習得できます。

そして、中級者以上のあなたは、ぜひ次のステップへ進んでください。トライフィンに慣れたら、ツインフィンで爆発的なスピードを、クワッドフィンでドライブの効いた加速を体験してみましょう。また、素材もパフォーマンスコア(PC)やカーボン系といったハイエンドな素材に交換し、フィンの持つ強い反発力と精密なコントロールを追求することで、あなたのライディングは一気に次のレベルへと引き上げられます。

フィン選びはサーフィン上達の楽しさを加速させる鍵です。これら上記の解説で得た知識を総動員し、自分のライディングスタイルや波のコンディションに合った最高のフィンを見つけてください。そして、あなたの理想のライディングを実現させましょう!!

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